公益社団法人日本ユネスコ協会連盟は、公益財団法人かめのり財団と共催で、高校生を対象にした「高校生カンボジアスタディツアー」を2014年から行っています。現地の人々との交流や国際協力の現場への訪問を通して、教育や文化を受け継ぐことの大切さ、平和の尊さを学び、帰国後も地球規模の課題を考えて行動する人を育てることがねらいです。第10回となる2026年度は、7月26日から8月2日まで実施されました。
今回訪ねたのは、連盟が1989年から続ける「世界寺子屋運動」で、2026年5月にカンボジアで24軒目として開所した「ノーコー・ピア寺子屋」です。この地域は長い内戦の影響に加えて貧困や教育機会の不足を抱え、小学校入学時の就学率は95%まで上がった一方、中学校では約60%に下がります。寺子屋では、小学校をやめた子どもの復学支援や中学校クラス、大人の識字クラスのほか、保健衛生教育や給食、職業訓練などにも取り組んでいます。
参加者は授業を見学し、伝統的な遊びや福笑いで学習者と交流しました。「勉強が楽しい」「先生になりたくなった」と話す子がいる一方で、身近にお手本となる大人が少なく「夢がわからない」と語る17歳の学習者との出会いもありました。そこから参加者たちは、学ぶ機会だけでなく、さまざまな生き方を知るきっかけをつくることの大切さに気づいたといいます。帰国後は10人全員が活動の続け方を考え、学校内外での発表や出前授業にも取り組んでいます。
注目ポイント
- 2026年5月に開所したばかりの、カンボジアで24軒目の寺子屋を高校生が訪問
- 「夢がわからない」という学習者の言葉から、生き方や職業を知る機会の大切さに気づいた
- 第8回の参加者は団体「GOAL」を立ち上げ、第9回は画材を寺子屋に送るなど、学びを行動につなげる流れが続いている
なぜこのニュースに注目したいのか
このツアーの特徴は、現地を見て終わりにしないことです。第8回の参加者は、寺子屋の子どもたちの「みんなでサッカーを楽しみたい」という願いをきっかけに「GOAL」という団体をつくり、ボールやユニフォームを届けようとしています。第9回の参加者も、音楽や美術などの教育が足りないことに目を向けて、クレヨンや色鉛筆を集めて送りました。
寺子屋で夢を描く子どもたちに触れた高校生が、自分の将来を考え、その行動がまた誰かの学びにつながっていく――連盟が「夢の循環」と呼ぶこの流れは、スタディツアーが持つ力をよく表していると言えます。国際協力に関心のある高校生や、教育に携わる方にとって参考になる取り組みです。
スタッフコメント

青葉 港調査・リサーチ
「夢がわからないと話した17歳の学習者の言葉が心に残りました。学ぶ場があっても、身近にお手本となる大人がいないと将来を思い描けないという気づきは、とても大事な視点だと思います。」

広瀬 ソフィー執筆・翻訳
「青葉さんが挙げた、お手本となる大人の大切さに私も深くうなずきました。高校生たちがそこから、さまざまな生き方を知る機会をつくりたいと考えたことに、若い世代の感性の確かさを感じます。」

定禅寺 真子校正・検証
「お二人の意見を受けて、第8回の参加者がつくったGOALの話が一層温かく思えました。一度の旅で終わらず、サッカーをしたいという願いに何年も応えようとする姿こそ、夢の循環そのものですね。」

編集長コメント
伊達 蓮編集長
「「まだ高校生だから」ではなく「高校生だからこそできること」を探したい、という参加者の言葉がとても頼もしいですね。一度の旅が、カンボジアの子どもたちと日本の高校生の両方の未来を少しずつ動かしているのが伝わってきます。皆さんもぜひ、コラムで高校生たちの声を読んでみてください。」