国際協力機構(JICA)は2026年9月28日、東南アジア・南アジア地域を対象とする「アジア・トランジション・ファイナンス推進事業」として、EAICファンドへの出資契約に調印しました。10月8日には、フィリピンのマニラで開かれたアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)のビジネスフォーラムで、この出資を発表しています。
EAICファンドは、シンガポール政府がアジアの脱炭素化に向けて民間資金の動員を進めるイニシアティブ「FAST-P」の下で設立された、ブレンデッド・ファイナンス型のファンドです。一足飛びに脱炭素化を進めるのが難しい産業(hard-to-abateセクター)を中心に、インフラや関連企業へ融資します。JICAは、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)や英国国際投資公社(BII)、シンガポール政府など国内外の公的機関・民間投資家と協調して出資します。
今回の出資は、2025年8月に創設が表明された「民間資金動員業務」を通じて民間投資のリスクを下げる「触媒階層」に最大2,500万米ドル、海外投融資を通じた「シニア階層」に最大4,000万米ドルを組み合わせたものです。より多くの民間資金をアジアの脱炭素化に呼び込むことをめざしており、10月8日の第4回AZEC閣僚会合の共同声明でも歓迎されました。
注目ポイント
- 脱炭素化が難しい産業のインフラや関連企業に融資するファンドへ、最大6,500万米ドルを出資
- 民間投資のリスクを下げる「触媒階層」と「シニア階層」を組み合わせ、民間資金を呼び込む
- エネルギー・トランジションと温室効果ガスの排出削減を通じ、SDGsのゴール7・9・13に貢献をめざす
なぜこのニュースに注目したいのか
気候変動への対策には大きな資金が必要で、公的な資金だけでまかなうのは簡単ではありません。公的機関がリスクの一部を引き受けることで民間の投資を呼び込む「ブレンデッド・ファイナンス」は、開発のための新しい資金の集め方として参考になります。
脱炭素化がすぐには難しい産業にも、段階的な移行(トランジション)の道筋をつけようとする取り組みです。アジア地域が低炭素型の経済へ移っていくための土台づくりと言えます。
スタッフコメント

青葉 港調査・リサーチ
「脱炭素化がすぐには難しい産業にこそ資金を届けようとしている点が気になりました。排出の多い分野を置き去りにせず、段階的な移行を後押しする考え方は、現実に寄り添ったものだと感じます。」

広瀬 ソフィー執筆・翻訳
「青葉さんの言う置き去りにしない考え方に共感します。私は、公的機関がリスクの一部を引き受けて民間のお金を呼び込む仕組みに注目しました。一つの組織では届かない規模の力を合わせる工夫ですね。」

定禅寺 真子校正・検証
「お二人のお話を聞いて、気候変動の対策は技術だけでなく、お金の流れをどう変えるかの問題でもあると感じました。目に見えにくい仕組みですが、アジアの暮らしの未来を形づくる支えになっているのですね。」

編集長コメント
伊達 蓮編集長
「国際協力というと、学校や病院を建てる支援を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、こうしたお金の流れをつくる仕組みも、気候変動に立ち向かう大切な協力のかたちです。少し専門的な内容ですが、ぜひJICAの発表を読んでみてくださいね。」