フィリピン北部のイロコスノルテ州は、同国のニンニク生産の6~6.5割を占める産地です。しかし国内で消費されるニンニクの94%近くが中国産で、安い輸入品との競争により現地の農家の収益は圧迫されています。そこで、日本有数のニンニク産地である青森県田子町の株式会社たからが、付加価値の高い「黒にんにく」をフィリピンで作って売る事業に取り組んできました。
きっかけは約10年前、現地のマリアーノ マルコス国立大学(MMSU)から協力を求められたことでした。同社はJICAの中小企業支援制度を活用し、調査や実証を重ねてきました。フィリピン産のニンニクは粒がとても小さく加工に向かないうえ、日本の品種は気候に合わず小粒になるという壁がありましたが、現地で試験圃場を運営する台湾チームから気候に合う品種の種を提供してもらい、粒を大きくすることに成功しました。
大学には黒にんにくの製造機を導入し、マニュアルも作って加工技術を伝え、現地の展示会での試食まで進んでいます。一方、市場調査では、品質が良くても高価なものは売れにくいという日本との違いにも直面しました。JICAの事業は2026年8月に終わりましたが、同社は今後も現地での栽培と加工を続け、地域農業の発展と農家の所得向上への貢献を目指すとしています。
注目ポイント
- 安い輸入品に押される地域の特産品に、加工で付加価値をつける試み
- 日本の肥培管理の技術、台湾チームの品種、現地大学の協力を組み合わせた
- 価格を重視する現地の消費者感覚など、海外ならではの課題にも向き合う
なぜこのニュースに注目したいのか
途上国の農家の収入を上げるには、作物をそのまま売るだけでなく、加工して付加価値をつけ、販売までつなげる仕組みが欠かせません。今回の取り組みは、その「バリューチェーン」づくりを地方の中小企業が担っている例として興味深いものです。
日本・フィリピン・台湾の人たちが知恵を持ち寄り、うまくいかなかったことも率直に語られている点も印象的です。現地の農業や生計向上に関わるNGOにとっても、技術移転や販路づくりのヒントが得られる事例と言えます。

編集長のコメント
青森の黒にんにくの技術が、海を越えてフィリピンの農家を支えようとしている話に、地方からの国際協力の可能性を感じました。気候の違いに苦労しながらも、台湾チームとの出会いで道が開けたというエピソードは、国境を越えた協力の良さそのものですね。
現地で採用した人材が青森で研修を受けるなど、人が行き来する関係も目指しているそうです。地域の産業と国際協力のつながりに関心のある方は、ぜひJICA東北の記事で詳しい経緯を読んでみてください。