JICA緒方研究所は、進行中の研究を紹介するシリーズの第3回として、エチオピアの電気自動車(EV)への転換を調べる研究を取り上げました。エチオピアは2024年1月、EVの制度や市場が十分に整っていない段階で、ガソリン車とディーゼル車の乗用車の輸入を禁止するという、世界でも珍しい措置をとりました。研究では、その後に輸入市場がどう変わったかを分析しています。
月ごとの輸入通関データと国際貿易統計に加え、現地の政府・企業・金融機関などへの聞き取りも行いました。初期分析では、バッテリー式EVの輸入が急増し、新車のガソリン乗用車の輸入が大きく減ったことがわかりました。ただし、こうした変化は禁止の前から外貨不足などを背景に始まっており、禁止措置は流れを加速させた可能性が高いと考えられています。
一方、充電設備は首都アディスアベバなど主要都市に集中し、利用者からは充電の待ち時間の長さ、修理できる技術者の不足、車両価格の高さなどの課題が挙がりました。輸入の大半は完成車で、国内の生産体制づくりが伴わなければ、石油の代わりにEVやバッテリーを輸入に頼る新たな依存が生まれるかもしれないとも指摘されています。今後は中古車市場のデータも使って、さらに分析を進める予定です。
注目ポイント
- EV関連の仕組みが整う前にガソリン車の輸入を禁止した、世界でも珍しい事例であること
- 変化は禁止の前から始まっており、措置はその流れを加速させた可能性があること
- 充電設備・整備・資金調達・国内生産の整備が、持続的な普及のカギになること
なぜこのニュースに注目したいのか
EVに関する研究の多くは、補助金や充電設備の整備が進んだ高所得国が対象です。電力の安定供給や購入資金のハードルが高いアフリカの国々で何が起きているのかを知る手がかりは、まだ多くありません。
エチオピアは2027年の国連気候変動枠組条約第32回締約国会議(COP32)の開催国に選ばれています。環境対策を産業やインフラの発展の機会にしたいという途上国の期待について、現場のデータから考える材料になります。
スタッフコメント

青葉 港調査・リサーチ
「禁止の前から変化が始まっていたという分析が印象的でした。政策の効果は数字を丁寧に見ないとわからないものなのだなと、研究という仕事の面白さを改めて強く感じました。」

広瀬 ソフィー執筆・翻訳
「青葉さんが注目した「禁止の前から始まっていた」という点に共感します。そのうえで、充電や修理の課題が利用者の声から見えてくるところに、現場の息づかいを感じました。」

定禅寺 真子校正・検証
「お二人が挙げた視点を伺って、環境の取り組みは国ごとの事情で形が変わるのだと思いました。EVが石油の代わりの新しい依存にならないか、という問いかけが心に残ります。」

編集長コメント
伊達 蓮編集長
「「脱炭素」というと先進国の話に聞こえがちですが、途上国には途上国の事情と挑戦があるのだと、この研究紹介を読んで感じました。研究者が問いを立てるところから紹介してくれているので、ニュースの見方も広がりますね。
気になった方は、JICA緒方研究所の公式ページで、研究の背景や図表もぜひご覧ください。」