11/6 国際保健医療学会、自由集会:貧困削減のレトリック

国際保健医療学会、自由集会:貧困削減のレトリック

1.背景

国連ミレニアム開発目標のもとに国際社会は貧困削減に取り組んで成果をあげていますが、一方、貧困削減のもとに行われる開発が貧困を生んでいる事例もあります。援助によっては環境が汚染されている事例もありますが、公表されることはあまりありません。貧困削減は言葉にするまでもなく援助に携わる人たちが長い歳月をかけて目指してきたものです。どうして国際社会はそんな当たり前のことを国連の目標としたのでしょうか。集会ではアドボカシー型NGO、大学、研究機関の先生方に援助の成果とともに、負のインパクトや環境問題の一面なども紹介していただき、安心して援助ができないものかを自由に討論したいと思います。

2.日時:11月6日、17:00-19:30

3.場所:医学図書館310号室(廊下つきあたり)

4.内容

1)黒岩宙司、東京大学大学院国際保健計画学、座長

集会の意義の説明:貧困削減という言葉の不思議、援助には負のインパクトや健康への悪影響もある。しかしながら、学会では表面的な健康に焦点が当てられ、援助の本質に迫る議論は少ない。また、個々の力は弱い。以下の先生方に専門分野での話をしてもらい、援助のあり方、また各分野との有機的な連携について考えたい。事例とし、援助を通して起きる医療廃棄物などの事例を紹介する。

2)松本悟先生、メコンウォッチ

貧困削減の名のもとに行われる援助によって建設される作成されるダムや道路などのインフラが環境を破壊し、立ち退いていく住民を貧困にしていき健康を失っていく。たとえばタイのラムタコン揚水式発電所周辺住民はダム建設中の粉塵が原因と見られる健康被害に苦しみ、カンボジアの国道一号線改修事業で移転を強いられた住民は生活が悪化した。また、日本が第二位の出資国である世界銀行が融資を決定したメコン川流域のナムグムトゥン2ダムは、計画段階で激しい森林伐採が行われる半面、社会開発プログラムから取り残されたため住民の生活は悪化し、結局ダムの補償に望みをかけるしかない。その補償計画すら悪化した住民生活を改善できるかはなはだ不確実である。世銀が融資を決定したが、世銀への資金拠出は日本が世界二位である。法的に援助機関に異議申し立てをしたり、メコン・ウォッチは世界銀行の第二の出資国として日本政府の政策決定者に影響を与える活動(衆議院議員会館での報告)などへのアドボカシー活動を行ったがい注目を浴びているが、ナムトゥン2グムダムへの世界銀行の支援は2005年3月末に決定され、日本政府もそれを支持したは建設された。こうした経緯と問題点について発表する。

3)渡辺知保先生、東京大学大学院人類生態学教室

バングラデシュを始めとするアジア各国では地下水の砒素汚染が大きな問題となっている.特に被害規模の大きいバングラデシュでは,1970年代に表層水の微生物学的汚染が深刻であったため、国際機関の先導により,井戸(tubewell)の敷設が進められた.これにより消化器系感染症のリスクは激減したとされるが,1990年代前半になって,地下水の砒素汚染による中毒患者が発生していることが判明した.現状では,砒素曝露による健康影響のリスク人口は数千万人とされる.生命と必須な水が生命にリスクを及ぼすという状況の解決にどんな選択肢があったのか,人間集団と環境についてのデータを背景に発表していただく。

4)中村哲先生、国立国際医療センター、適正技術移転室

(例)1980年代後半からメコン川の下流では住血吸虫のコントロールが行われ、1999年には有病率が1%以下にまで減少した。しかしながら2003年には症例数が上昇し、演者の調査では50%の地域も出てきている。レトロスペクティブに見れば、科学的な計画が必要であった。援助の成果とともに、アプローチによっては生じることもある負のインパクトの一面について発表していただく。

各発表20分程度、10分を質疑応答。

全体討論30〜40分

1.貧困削減についての討論

2.積極的に筋道を立てて政策決定者に働きかけ、環境ガイドラインがあっても、どうしてダムは作られ、貧しい人はさらに貧しくなっていくのだろう。

3.援助が起こす負のインパクト、環境汚染の被害はあまり語られることがない。事例があれば会場から意見。結果的に健康が害されれば、さらにそれを解決するために援助ができるという考えが、国際社会の政策決定者にはあるのだろうか。

4.各分野の連携について。現場の問題点に熟知する援助団体と研究者との有機的なネットワーク作成は可能か?保健医療以外の分野ではどうか?

黒岩宙司

東京大学大学院国際保健計画学教室

連絡係、白山芳久

メール:iruka_jp@m.u-tokyo.ac.jp

電話: 03-5841-3688(秘書室)